カッター

深夜 痛む氷

どこにも売っていない対話

カッターがある

酒はよどみ とどこおり

血が見たくなってくる 眼を押し

口を開け DVDを吐き出す

唾液も拭わず 再生

森だ 誰もいない

薄暗い 深緑の世界

大樹の根で地面は凸凹

はばたきの音がして

美しいものは

死ぬこと以外すべて諦めた鳥の翼

血が見たい

カッターがある

朝焼けの話がしたい 誰もいない

後頭部が痺れ スライドしていく

映像が 流れる残酷に ひりつく指先に

熱気と冷気の殺到 針の苦しみ

森が震動し わたしが

衝動が 視界を

斜めに引き裂いて 消滅

白も黒もなくなり

誰もいない

カッターがある

その刃だけが

無言で光っている