外出

包囲され

密封されていた

真空の膜を突き破り

ぼくはペケーッと外に出た

 

Suicaってピッて便利だね

イェーイ湘南新宿ライン

流れる夕暮れ液

子どもはいつでも打楽器奏者

 

Suicaってピッて便利だねピッて

ソリッドなハチ公尻目に

レッツ・スクランブル交差

交錯するぼくら個性的な蟻たち

 

田舎育ちの狂った蟻は

インターネットカフェに漂着

座敷 と称するにはあまりに狭く風情がない個室

また囲われている

 

息が詰まる前に

攻撃的な瞑想……

肉体を脱け出た わたし

旅に出る

 

藍 深海の木立を縫って叫ぶ銀河

そこで白熱する溶岩の喜び

和音クリスタル馬に跨ってきらきらと水中を駆け

熱狂する魚らの口々に文庫本を押し込んでゆく

 

触れると弾ける虹の金平糖を散布し終えたら

火照った地下鉄でなわとびをしよう

本当の教室で鋭い無限音楽を聴こう

何だってできる発光リンゴジュース100%!

 

小動物の断末魔! に似た隣人の歯ぎしりが

わたしをぼくに引き戻す

鈍重な肉

閉塞窒息焦燥空間

 

ウッと押さえつけられる胸

ワーッとちりちりする背中

無理だ

もうここにはいられない

 

外に出ると夜で

600mの自動車が横付けされていて

運転手は鳥で

鳥の運転手さんはドアを開けてくれる

 

「事情は承知しております

 ご案内しましょう

 紫陽花の夜を引き裂いて

 電気と酸素とレモンの国へ」