2021-01-01から1年間の記事一覧

いわば雨の子――芳賀博子『髷を切る』五句評

欠けてから毎日触れるガラス猫俗にいう世界に一つだけの花一年をかけて一年が終わるまだ雪がちょっと残っている男最後には雨の力で産みました /芳賀博子『髷を切る』 一句目、欠けてからより頻繁に触れるようになったということ、と思うと、深い慈しみを感…

白鳥の肯定――堀田季何『人類の午後』五句評

蠅打つや自他の區別を失ひて 刎ねられし蛇いまだ指咬む力 向日葵や人撃つときは後ろから 生贄を使ひ切つたる旱かな 首振つて白鳥闇を受容れぬ /堀田季何『人類の午後』 ※原文の「受」の字は少し違います。 一句目、蠅に苦戦する様子がとても滑稽に表現され…

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見たくなかった臓器 見たかった臓器なんてない 色を言いたくない 不健康 校則に反してる グローバルにはウケる? いやいや アップロードされて みんな無料で吐く ぐったりしたからって 勝手に寝るな 無料で添い寝するな 良質なサービスには相応の対価を支払…

この夜に冷えピタが――平出奔/田中はる『夜のでかい川』4+5首評

中学の同級生をひとり思い出してください。 ……そいつさえいなければ、でしたか? 誰よりも考えているこの夜に冷えピタが必要だったのか 対岸に誰かの炊いた米がある米は勝手に炊からないから 二月尽 風が強くて「かぜつよ」とツイートするときもう止んでいる…

頓狂二〇二一

少なくともわたしは同意していない バカ花火 容易に想像できる 素っ頓狂にすっとんきょうと呼ばれ 沸き上がったときの勢いで 国ごと吹き飛んでいくのだ どんな気持ちで? ユリ おまえに口づけるとき 何千何万と死ぬのだ 傾いてかたむいて 正気を保てない も…

離れる音にいる――岡田幸生『句集 無伴奏』七句評

きょうは顔も休みだ おつりのコインがひえている 夕日の出して見せたような鷲だった 各駅停車だから見える質屋だ つめたい手紙がよく燃えている 爪を切った指が長い 王冠と瓶の離れる音にいる /岡田幸生『句集 無伴奏』 きょうは顔も休みだ きょうは休日で…

ブランドものの破壊力とばあちゃんの思い出――雪舟えま『たんぽるぽる』十首評

タカハシの天体望遠鏡みたいおまえのふとももは世界一 逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない 玄関の鉢に五匹のめだかいてひろい範囲がゆるされている 信号が果てまでぱーっと青くなりアスリートだと思い出す夜 どこでそんな服をみ…

句集にたどり着くこと――川合大祐『スロー・リバー』十句評

二億年後の夕焼けに立つのび太 この列は島耕作の社葬だな プラモデルパーツの夏目漱石や 黄が白を差別せぬよう卵混ぜ 世界からサランラップが剝がせない 生涯をかけて醬油を拭き取ろう 四コマの承のところでわからない ヤバイってみんな言ってる光あれ 随分…