春、手近な森へ

春 壊滅

オレンジジュースの割腹自殺

話すことに嫌気が差し

牛がパンケーキになり

聴くことに倦み

豚がアップルパイになり

読むこともままならず

鶏がチュロスになり

観ることもわずらわしく

死んだ顔で甘いものばかり食べ

スマホを取ったり投げたりする

鉄筋コンクリート造の家の

鉛布団の憂鬱にあって

柔弱な身体の奥底から

こみあげる

呪詛の言葉

を飲み込め なくなったとき

私は

ためらわず

自らの喉を掻き切る

(ことができるだろうか

 

そうしたら

きっと

切り口から

呪いを押しのけて

スイートアニマルズ

飛散して

次々と

シュガー振りまいて

私だったものを

運んでくれる

私は

チュッパチャップスなめつつ

彼らの後に続く

森へ

お菓子の家へ

チョコレートのスコップで

埋葬を終えたら

ソーダのシャワー

飲むように浴び

浴びるように飲む

甘い猫や犬や兎と戯れる

いかなるストレスもない

森での生活

 

何度目かの春

どす黒く激怒する雲

吹きつける暴風

叩きつける豪雨

雷光のように

合金製ポン・デ・ライオン鋭くあらわれ

家に驀進

炸裂

お菓子の家、倒壊

わたあめのベッドでツムツムしていた私は

板チョコやウエハースやクッキーの下敷きになり

離れでテトリスしていた私は助かる

飴の窓から顔を出した私に

無表情で

「耐震構造なってない」

とだけ言い残し

クラッシャーは去る

残骸を見ながら思う

戻ろう しっかりした家に

あのハードでビターな家に

甘味はもう少し抑えよう

私を強く建築するために

家が無くなっても

しぶとく生きていけるように

これ以上

私を埋葬せずに済むように