鉄骨

かたちあるものすべて滅びるので

テトリス テトリス

鉄骨が落ちてきて

君が消えた日は

祝日だった

 

それでも地球は運動をやめなかった

今日は太陽が近いね

肌が焼けるかすかな匂いと

芳醇な茸の香りと

街は生気に満ちている けど

 

閉店した美容院の鏡に映る君の影

 

心を落ち着かせるために

週刊誌の投書欄を見る

 

マクドナルドにパソコンを持ち込んで

 詩を書いていると

 妙な高揚感があるんですが、

 これはいったい何なんでしょうか」(二十七歳、男性)

 

「持ち込み可のテストに

 友人を持ち込んではいけないなんて

 あんまりだと思いませんか」(二十一歳、女性)

 

知らんがな

 

気を取り直して

カラオケ フリータイムで

国歌をうたって

 

吐く

 

やってられない

今日はもう退散しよう

 

夕暮れの帰路

国道沿いのコンビニで

また君の姿を見てしまう

エビマヨのおにぎりに手を伸ばして

微笑んでいるように見えた

 

ドカドカ動悸に苛まれつつ

雑誌コーナーへ

 

「あの美容院に

 彼女はまだ通っているのではないでしょうか」(二十九歳、男性)

 

「あなたが待ち合わせ場所を別のところに指定していたなら

 彼女は死なずに済んだのではないでしょうか」(三十五歳、女性)

 

頭がぐるぐるして

コンビニを飛び出す

 

看板が私を責める

どこかから歌が聞こえる

おまえのせいだ

おまえのせいだ

 

ここはどこだ

どこへ行っても

看板がある

歌が聞こえる

逃げ場はない

 

ここは事故現場だ

ここはどこであろうと事故現場だ

どこにいようと

鉄骨は落ちてくる

どうやっても逃げられない

ゲームオーバーだ

 

ぶるぶる震えながら

沈む血の夕陽を

朦朧と飲んでいる

僕の傍らに

君が

静かに寄り添ってくれる